妄想特急 books & music

読んだ本と聴いた音楽のメモ

読むペースが加速中

『縁起のいい客』 吉村 昭 著(文春文庫)
縁起のいい客 (文春文庫 (よ1-44))←新刊なんだから書影ぐらい登録しといてほしいもんだ
吉村昭のエッセイは初めて読んだ。小説はけっこう好きでいくつか読んでいるが、エッセイは特に興味を引かれず手にとったことはなかった。どうしてこれを読んだかというと彼女に借りたからだ。吉村昭を借りるとは思わなかった。小説にも興味を持ったらしいから、今後借りることができる。うふふ、ラッキー。
エッセイでも小説のときと変わらず、いい文章を書くなと思った。大ベテランに「いい文章を書くなと思った」とは自分でも何様だと思うが、ホントに飾り気がなく無駄の無いすばらしい文章なのだ。
小説の取材旅行のときの話とか、普段の何気ないこととか、作家といえどそんなにドラマチックな日常を過ごしてるわけでもない。ましてや80歳になろうとしているおじいさんなのだ。そんな穏やかなエッセイがとても心地いい。

きよしこ』 重松 清 著(新潮文庫
きよしこ (新潮文庫)
読み終わった直後、いや読んでる最中から、心がぞわぞわして落ち着かなかった。
重松清といえば家族の小説だが、少年を主人公にした小説も数多く書いている。僕が今まで読んだ少年の小説は2つだけ(『エイジ』『ナイフ』)だがこれがイマイチだった。
しかしこの『きよしこ』は何でこんなに気持ちが落ち着かないんだろうと戸惑うほど胸にきた。多分今までのものはかなりストレートに書いていたからだろう。『きよしこ』は随分と感情が複雑だ。
主人公は吃音を持った少年。吃音のおかげで引っ込み思案な性格になっている。彼の成長を描いた作品なのだ。
この少年の気持ちがじつに複雑。でも誰もが味わったことのある感情である。吃音のあるなしにかかわらず青春というものは同じなのだろう。その意味でこれは青春小説である。