妄想特急 books & music

読んだ本と聴いた音楽のメモ

選挙の前にこれを読め!

『ダイスをころがせ!』(上・下) 真保裕一 著(新潮文庫
ダイスをころがせ!〈上〉 (新潮文庫) ダイスをころがせ!〈下〉 (新潮文庫)
たまたまタイムリーな時期に読んでしまった。これは選挙小説である。そして青春小説でもある。
カネも地盤も何もない34歳の男が衆議院総選挙に無所属で出馬する話だ。高校時代の地元の仲間が応援してくれて、苦しいながらも選挙戦を戦っていく様子が、それはもう細かく描かれている。
県知事をしていた自分の祖父の収賄疑惑なども絡めながら、テンポのいい一流のエンタテインメントとしてガシガシ読み進められる。
しかし何といってもいちばんの読みどころは、選挙活動の一つひとつを事細かに描写している点だ。普通の人間が無所属で選挙に出ようと思ったらどんなことをしなきゃならないのか、どんなところにカネがかかって、どこがいちばん大変なのか。そういった情報が見事に小説になっている。
いまの選挙制度は政党から立候補する候補者に断然有利になるようにできている。無所属は「出るな」と言わんばかりの扱いなのだ。全然公平ではない。そんなことも僕は知らなかった。
選挙のときに街に置かれる掲示板。あそこに貼ってある各候補者のポスター、あれ候補者の陣営が各自で貼っているって知ってました? 僕はてっきり選挙管理委員会とかが貼ってくれるのかと思ってた。
そんな選挙の「へぇ〜」もいろいろ知ることができる小説でもあるのだ。
9月11日までまだ日にちはある。ぜひこれを読んでみよう。今回の選挙がまた少しおもしろく感じると思う。