妄想特急 books & music

読んだ本と聴いた音楽のメモ

どうなの、これ?

アジアンタムブルー大崎善生 著 (角川文庫)
アジアンタムブルー (角川文庫)
パイロットフィッシュ』に続いて読んだ大崎善生作品。『パイロットフィッシュ』の細かいストーリーは忘れてしまったが、雰囲気は覚えている。その雰囲気をそのまま引き継いだ続編のような作品がこの『アジアンタムブルー』だ。
確か主人公はエロ本の編集者というのは共通だし、アジアンタムという植物も両方に出てくる。
パイロットフィッシュ』を読んだときにもこの日記に書いた(→ここ)のだが、雰囲気のある仕上がりではある。でも僕はこういうお洒落で繊細な雰囲気が苦手なのだ。ぎりぎり読めないこともない。悪くもない。世間的に秀作なのだろうとも思う。
しかしなぁ。会話文がわざとらしいんだよなぁ。そんな会話しねぇよ、と思ってしまう。やっぱり小説にはリアリティを求めたい。
それからこの作品は恋人を亡くしてしまう主人公が、その深い喪失感から立ち直っていくという話なのだが(これはネタバレではない。本のあらすじ紹介のところにも書いてあるし)、題材的にこれはどうなのだろうか。恋人が死んでしまえばそりゃ泣けるに決まってんじゃんか。主人公を自分に置き換えてみれば誰でも胸が痛くなるもんだし。僕だってそんなの耐えられません。つまり「セカチュウ」みたいなもんで、“死”というのは涙を誘うもっとも簡単な手段だということ。あんまり安易に使わないでほしい。