妄想特急 books & music

読んだ本と聴いた音楽のメモ

重松異色作品

『世紀末の隣人』 重松 清 著 (講談社文庫)
世紀末の隣人 (講談社文庫)
「読み物作家」の重松清が書いた事件ルポ。したがってルポライターが書いたのとは一味違う読み物作家らしい味付けになっている。
これは作品の中でも書いているが、読み物作家だからこそ書ける書き方があるということで、意識的に物語っぽく書いているのだろう(まあ、当然それしか書けないということもある)。そこらで普通のルポライターと差別化しないとルポを重松清が書く意味がない。
そういうこともすべて承知した上であえて書く。餅は餅屋だなぁと。事件ルポはルポライターが書くのがいちばんおもしろい。これは僕の好みなのだが、ルポはライターが前面に出てこない方が良いと思う。その意味で作家がルポを書くのはあんまり賛成できないのだ。
読み物として、単に作品として向き合えば、この重松節もかなり味わい深い。