著者が雑誌に書いた記事や、他人の本に書いた解説、対談記事など、さまざまな記事を集めたもの。
古いものはデビュー当時のものまで掲載されている。
著者の探検に対する考え方が随所に現れていて、探検などしない人が疑問に思う「なぜ極地などの苦しい場所へ命の危険を顧みずわざわざ行くのか」という問いに対する答えが繰り返し出てくる。
要は現代社会は「死」が隠されていて、人々は死を意識することなく生活している。その裏返しで「生」も殊更感じられなくなっているので、探検で「死」に近づくことでその「生」を実感するのだという。
おそらくそうだろうと思っていたことだったので、とても納得できた。
ところが、あとがきを読むと、これらを書いた10年くらい前と今の考えは全然違うらしい。そりゃ10年もたてば人間考えは変る。
でもその考えの違うエッセイを著者は本として出したくはなかっただろうなと思う。
たとえ文庫としての再発だとしても。