妄想特急 books & music

読んだ本と聴いた音楽のメモ

久々に泣ける小説だった

『トワイライト』重松 清 著(文春文庫)
トワイライト (文春文庫)
重松清の得意技「家族」をテーマにした小説。
重松清は大好きなのだが、当たりハズレがあって、まあハズレといっても並みの作家より全然いいのであるが、それゆえに「まあまあだな」となったときはちょっと残念な気分になる。
しかし、この『トワイライト』、過度な期待を持たずに読み始めたらすぐにやられた!
小学生のときに埋めたタイムカプセル。それを約30年たって42歳になった今、みんな集まって開けてみようということになった。何十年ぶりかに会う同級生。昔話に花が咲く。近況をおもしろおかしく話す。でも彼らはそれぞれいろんな問題を抱えていた。リストラにあっている奴、家庭崩壊寸前の奴、人気のなくなった予備校講師、明日をも知れない命で入院している者。最初は見栄を張ったり取り繕っていたが、どんどんボロが出てくる。昔のなつかしい思い出だけじゃ人は生きていけない。
世代としては自分よりもうちょっと上の世代だ。大阪万博を少年時代に体験し、未来を夢見た時代の元・少年少女である。だから彼ら彼女らの輝かしい未来の象徴として「太陽の塔」が頻繁に出てくる。おりしも岡本太郎が話題になっている今、そのころの世代の人に話を聞いてみたいなと思った。