妄想特急 books & music

読んだ本と聴いた音楽のメモ

今日読み終わった本

『リビング』重松 清 著(中公文庫)
リビング (中公文庫)
家族を書かせたら天下一品の重松清。こないだ『エイジ』を読んでちょっとモヤモヤしてたので、今度はこれを読んでみた。
そしたらこれが重松節全開のすばらしい小説だった。
まず途中に連作短篇の「となりの花園」というのを、春夏秋冬の4篇織り込みながら全部で12篇の構成となっているのがおもしろい。
各話家族の微妙な気持ちの揺れが、これしかないというような言葉でつづられている。
そう、この人はテーマもさることながら、文章がウマイ。家族を描くのに、ヘタな人が書いたらそれこそクサくなってしょうがないが、こういう繊細なんだがさりげなくウマい表現を使われたら見事というほかないだろう。
中でも「いらかの波」がベストではなかろうか。里帰りした夫婦ら3組の人間の人生の一瞬が、城址公園で交錯するせつない話だ。せつないだけではない。読み終わったらじんわり胸があったかくなる。
重松清は少年を主人公にするより、こういう中年を軸に家族を書いたほうがゼッタイにウマい。