妄想特急 books & music

読んだ本と聴いた音楽のメモ

今日読み終わった本

『邪魔』奥田英朗 著(講談社文庫)
邪魔(上) (講談社文庫)邪魔(下) (講談社文庫)
先日、『空中ブランコ』で直木賞を受賞した奥田英朗。彼が2001年に発表した本書はあの最高の名作(?)『最悪』に続く傑作だ。
僕は『最悪』と『邪魔』しか読んだことないが、“堕ちていく人間”を描かせたらこの人の右に出るものはいないと思う。それくらい気持ちいい。気持ちいいといったら語弊があるだろうか。でも、なんでもない日常を過ごしている人が、あるきっかけであっという間に転落していく。その様を読むと「人間はこうもあっけなく堕ちていくものなのか」と笑ってしまうくらい鮮やかに感じてしまう。
『邪魔』は『最悪』パート2といった感じだ。だから『最悪』にハマった人はぜひ読むべきである。
今回の「堕ちていく人」は、主婦と刑事だ。
夫と子供2人の4人家族。スーパーのパートをして家計を助ける主婦・及川恭子は、平凡ながらもその平凡な家庭が何よりも幸せと感じている。どこにでもいるごくフツウの主婦だ。
一方、数年前に妻を交通事故で亡くした経験をもつ刑事・九野は、恭子の夫・茂則の勤務先の放火事件を調べることになる。
ホントに人間どこに落とし穴がぽっかり口を開けているかわからないな、とつくづく思う。
もうね、2人ともかわいそうすぎるんだもの。胸が痛いというか切ないというか。よくもまあこれだけの話を考えられるものだ。
上下巻でかなりのボリュームだが、あっという間に読み終わるこの筆力。こういうストーリーにはこれだけ圧倒的な筆力が必要なのだ。まさに“ページをめくる手が止まらない”本である。