妄想特急 books & music

読んだ本と聴いた音楽のメモ

オリンピック前にタイムリーな本

オリンピックの身代金(下) (講談社文庫)
東京オリンピックを前に国を脅迫しようとする青年を描く。
東京オリンピックといっても1964年に開催されたものである。
秋田出身で東大の学生が兄が東京の工事現場で亡くなったことを契機に、国家を脅して金を要求するようになるまでを描いている。
オリンピック景気で東京だけが繁栄するのに憤りを感じて国家を脅すというのはこの時代ならではなのか。しかし地方が貧しいというのは今も変わらないのではないか。
もちろん作者も東京オリンピックの時は5歳だったはずで、資料を元に書いたのだろうが、この時代の空気はわかる。
奥田英朗の小説はこういうどんどん落ちていく人間を描くものが多い。この作品も最後は何かやりきれない。