妄想特急 books & music

読んだ本と聴いた音楽のメモ

すごい戦争小説

『ルール』 古処誠二 著 (集英社文庫
ルール (集英社文庫)
戦争小説は過去、大岡昇平の『野火』を読んだことがあるだけだった。それ以外、他にどんなものがあるのか知らなかったこともあって、戦争ものはまったく読んでいない。
ここで言う「戦争小説」とは太平洋戦争あたりが舞台となっているものを指す(そういう正式なジャンル分けがあるのかどうか知らないが、僕のイメージとして)。いま流行の福井晴敏などの戦争ものとはちょっと違う。
『野火』は当時高校生だった自分には少し難しく感じたが、それでも異様な迫力があって、けっこう好きな小説だった。大人になって読み返してみてもその印象は変わらなかった。
古処誠二という人が戦争小説を書いていると何かで読んで、そのときはふーんとしか思わなかったが、この人が1970年生まれだと聞いて驚いた。僕とほとんど同い年だ。そしてこの『ルール』という作品を読んでみてさらに驚いた。これが若い著者が書いたものなのだろうか。
太平洋戦争末期、フィリピンのルソン島で任務を遂行しようとする鳴神中尉らが遭遇する、想像も絶する密林の中での飢餓状態。
あまりにも重く暗く、これが戦争当時、普通にあった出来事なのだと思うと呆然としてしまう。
極限状態を体験する兵隊たち。人間を人間たらしめるルールとは何なのだろうか? そこに本当にそんなルールは存在するのか?
しかし30歳そこそこでこれだけの小説が書けるとは驚きだ。あまり若い作家が挑戦しないジャンルだけに、この人にはどんどん戦争小説を書いていってほしい。なかなか読者を獲得できないかもしれないが。