妄想特急 books & music

読んだ本と聴いた音楽のメモ

まあまあかな

 

春に散る 上 (朝日文庫)

春に散る 上 (朝日文庫)

 

 ボクシングを辞めてアメリカに渡っていた主人公が40年ぶりに日本に帰ってくるところから始まる物語である。

沢木耕太郎の小説は久しぶりに読んだ。展開がなんとなく読めるが、それでもストーリーはおもしろかった。

いろんな人生がある。その終わりに自分の人生に満足できるかどうか、そこが肝心だと思う。

主人公ら元ボクサーの4人はそれぞれ大変な人生を送ってきたが、最後にこういう人生が待っていた。とても幸運だし幸せだ。

自分は人生の終わりはもう少し先だが、とてもじゃないが幸せとは言えない。

どうしたらいいか、一度じっくり考え直す必要があると思い始めた。

楽しい

 

k.m.p.の、ハワイぐるぐる。

k.m.p.の、ハワイぐるぐる。

  • 作者:k.m.p.
  • 発売日: 2015/10/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 ふと見かけて覗いてみたら楽しそうだったので読んでみた。

そしたらこれが本当に楽しかった。おもしろかった。

著者の2人が車でハワイ島を回るのを、絵と写真と文で綴ったおもしろ旅行記。ハワイで初めて車で旅をするらしく、ビクビクしながら運転する様子とか、もうわかるとしか言えない。

外国に行くと日本国内と違って、よくわからない状況になっても結局最後までなんだかわからないで終わるってことが多い。言葉の壁もあるから聞いて理解して納得できないのよね。そこがおもしろいのだけど。そういうことがいっぱい書かれていてとても共感できた。

絵がとても楽しく、文章よりも写真よりも感情が伝わってきて自分までドキドキしながらハワイを旅しちゃった気分。

結構細かく書かれているので旅行するときの参考にもなると思う。

 

おもしろかった

 

一億円のさようなら (徳間文庫)

一億円のさようなら (徳間文庫)

 

 おもしろくて夢中で読んでしまった。

妻が莫大な財産を隠し持っていたら、というありえなさそうな設定。でももし自分だったらどうするだろうと考えながら読んだ。

なんか中途半端なところで終わってるので、このあとどうなるのかいろいろ想像する。

ドラマになっているらしく、現在放送中。見てないが。たしかにドラマ向き。

金沢が舞台になっていて実際の店が出てくる。回転寿司など食べたくなった。

話運びが巧みで途中でやめられない。

ミステリの古典

 

黄色い部屋の謎【新訳版】 (創元推理文庫)
 

 ミステリの古典として有名なこの作品が新訳で出ていたのでいい機会と思い、読んでみた。

自分が海外小説が苦手だし、古典だから今となってはトリックにも新鮮味はないが、それなりにおもしろかった。発表当時は話題になるのもわかる。

ツッコミどころも結構あるが、もう古典だからそこまで求めるのは酷であるかもしれない。

こうやって新訳出してくれると読むチャンスができるからとてもいい。他にも新訳で読みたい古典ミステリはいっぱいある。

これが北村薫

 

太宰治の辞書 (創元推理文庫)

太宰治の辞書 (創元推理文庫)

  • 作者:北村 薫
  • 発売日: 2017/10/12
  • メディア: 文庫
 

 超久しぶりの“円紫さんと私”シリーズで大喜びで読んでみたら、ちょっと違った。このシリーズの要素はほとんどなくて、申し訳程度に円紫さんと正ちゃんが出てくるのみ。

内容はここ最近の北村薫の興味「文学史上の謎をさまざまな資料を駆使して推理する」をそのまま入れたもの。『いとま申して』などと趣向は同じ。

これこのシリーズとして出さなくてもよかったのではないか。でも小説として出したかったんだよねぇ。そうなるとこのシリーズを使うしかなかったのかな。

小説の中身としては雰囲気もあるし知的好奇心も満たせるしでこれぞ北村薫という感じでいいとは思う。

ここに出てくる文学作品をすべて読んでて太宰治の大ファンでっていう人なら読んでて楽しいだろう。

すごい探検だ

 

極夜行 (文春e-book)

極夜行 (文春e-book)

 

 北極圏の極夜を旅する探検記。

旅すると言ってもぜんぜん生易しいものではない。20日間くらい太陽が昇らない闇の世界で、月の明かりだけが頼り。気温もマイナス30度を下回る。それを自分一人だけで(犬1匹とともに)行くっていう、考えただけで気が狂いそうになる旅だ。

もうなんでこんなことをわざわざするんだろうという、何度も疑問に思ったことをまたもや思ったが、闇が明けて太陽を見たとき自分はどんなことを思うのか、それを確かめる旅らしい。

こうやって書いてくれるから、私たちは北極圏に行かなくても疑似体験できるわけで、その点はありがたいけど。

何度も(本当に)死にそうになりながら、途中笑ってしまう表現が出てくる。ツアンポーの時とは芸風が変わったのかな。

しかし、『空白の五マイル』が衝撃的すぎてその後の作品が弱く感じてきたが、本人も言っているように、本当の意味での探検作品第2弾ができたなと思った。

これは力作だ

 

 戦時下、演劇に携わる人たちがどうなったのか、演出家・八田元夫とその劇団「桜隊」を中心に描かれる。

演劇は好きでよく観るが、この話はまったく知らなかった。

戦争が始まると政府によって演劇はあらゆる面で規制を受ける。これがうっすら知ってはいたがとんでもない取り締まりだ。脚本を検閲されてストーリーがわからなくなるほど削られる。上演中は禁じられたことをやっていないか役人が見張っている。ちょっとでも逆らうと逮捕されて拷問である。

いま様々な題材の芝居が演じられているこの現代が奇跡のようだ。たかだか数十年前はこんなだったのだ。考えられないくらい恐ろしい。

劇団は無理やり移動劇団をやらされ地方に巡業させられる。

戦争がこれほどまでに何もかも変える。また戦争が起これば同じことが繰り返される。現代人に限ってまさかと思うだろうが、戦前の人たちはみんな「まさか」と思っていたはずだ。