妄想特急 books & music

読んだ本と聴いた音楽のメモ

つらく悲しい時代小説

露の玉垣 (新潮文庫)

露の玉垣 (新潮文庫)

江戸時代の新発田藩を舞台にした時代小説。実在の人物を登場させている。といっても有名な歴史上の人物ではなく、溝口半兵衛という藩の歴史を書き残した人が中心だ。
新発田藩は水害が多く、人々が貧しさに苦しむ様子が克明に描かれる。これが読んでいてとてもつらい。
食べるものもろくに無く、それでも自分のことだけでなく藩の政治も行わなくてはならない。
今と違って並みの責任感ではないから、どれだけ苦しんだのだろうと思う。
つらい中にも人間の生きる精神力が感じられるのはいつもの乙川作品と同じだ。だから読んでいて心に残るのである。