妄想特急 books & music

読んだ本と聴いた音楽のメモ

漱石だってただのオヤジなのだ

千駄木の漱石

千駄木の漱石

夏目漱石の『吾輩は猫である』を読んで、これは漱石自身のことを書いてるなとわかったので、それならと、これが書かれた千駄木時代の漱石を描いた本が読みたくなった。
タイミングのいいことにこの本が出てたので、早速読んでみた。
漱石が書いた手紙や夫人の日記、文学仲間が書いた漱石に関する文章などから、千駄木に住んでいた頃の漱石がどんな生活をしていたかを描き出していく。
これがとてもおもしろい。文学者というイメージが覆された。まるで頑固なオヤジということがわかる。そこらにいる怒りっぽい偏屈なオヤジ。
どこそこへ晩御飯を食べに行っただの、どんな芝居を見ただの、どこそこを散歩しただの、普通の生活をよく手紙に書いている。これがとてもいい。
この千駄木をこうやって漱石が生活していたんだなぁと感慨深かった。
そこから、どの時代でもそこで普通に生活している人間がいて、いい意味で100年後のことなどどうでもいいと感じて、それぞれの人生を生きていたんだと人の命まで考えてしまった。
吾輩は猫である』が当時売れたとはいえ、まさか100年後にも日本中で読まれている作品になっているなど、当の漱石本人も思わなかったに違いない。
おそらく漱石は現代をどこかから見ていて「千駄木もこんなところになったのか」と思っているのではないか。