妄想特急 books & music

読んだ本と聴いた音楽のメモ

西村京太郎初期の傑作

新装版 殺しの双曲線 (講談社文庫)

新装版 殺しの双曲線 (講談社文庫)

僕がミステリにはまるきっかけとなったこの本が新装版文庫で出ていたので思わず購入。早速読んだが、今の西村京太郎には考えられないほどのキレのある本格ミステリで、今読んでもかなりおもしろかった。
1971年の作品だから今から41年前。僕が読んだのは、多分中学生か高校生の頃だったと思う。それでも初版から15,6年はたっていたわけか。
これを書いたとき西村京太郎は41歳。たしかに脂が乗っていたに違いない。初期の作品はトラベルミステリはほとんどなく、様々なタイプの作品を書いていた。そのどれもがおもしろくてむさぼるように読んでいたのを思い出す。
「殺しの双曲線」は冒頭で作品で使ったトリックは「双子」を利用したものだといきなり明かしてしまう。それでも見破れないだろうという読者への挑戦なわけだ。
細かい内容を覚えていなかったため、改めて楽しめた。
今読んで時代を感じることもあって、携帯電話がない時代というのはもちろん、「トルコ風呂」という表現も出てくるし、食堂でいちばん高価なものがカツ丼で800円、普通の定食が200円とあっておもしろかった。
今の読者が読んでもじゅうぶん楽しめる本格ミステリだと思う。