- 作者: 天童荒太
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2011/05/10
- メディア: 文庫
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天童荒太の直木賞受賞作。
かつては『永遠の仔』で衝撃を受けたが、これも読後いろんな思いが頭の中を渦巻いてしまう。
日本中の亡くなった人を悼む旅を続ける静人、癌に侵されているその母・巡子、静人に付き添って歩き出す倖世、静人を追いかける蒔野。それぞれの登場人物の死生観が入れ替わり立ち代り自分の中に入ってきて、翻弄されるばかりだった。
誰も静人のように死者を悼むことはできないだろうが、小説の中だけでもこういう人がいてくれることが救いである。
震災で亡くなった人が大勢いるこの日本にもし静人がいたら、彼の旅はどのようになっていくのだろう。
心がざわつき、また同時に救われるという不思議な小説である。