北村薫が父親を描く3部作。
父の死後、父の日記を見た作者がそれをなぞりながら父の周りの人物 (主に折口信夫)を描く。
たとえ息子だとしても自分の日記を見られたくはないと思うが、ここまでの作品に昇華してくれたらこの父親も本望だろう。
ただ日記を載せるだけでなく、そこでの出来事を他の資料に当たり、関係者を訪ね、想像を巡らし、わくわくするような物語につくりあげている。
童話などを創作していたお父さんだから、息子が作家になったのはとても喜んだのではないだろうか。お父さんの生前に息子がすでにデビューしていたかはわからないが。
しかしここまでいろいろな資料を読み込み、父親の日記を何十倍にもふくらませる、というのはさすがと言うしか無い。
また想像を巡らすというのは作者が小説家だからということもありそうだ。
本当に力作でおもしろかった。