妄想特急 books & music

読んだ本と聴いた音楽のメモ

すばらしい変化

光媒の花 (集英社文庫)

光媒の花 (集英社文庫)

連作短編集。
道尾秀介だからあっと驚くミステリ的仕掛けを期待していたら、そういうのは無かった。でもそれ以上にすばらしい短編集になっていた。
ミステリ風味なんてほんの味付けで、これは人間の悲しみやほのかな喜びを描いた純粋な小説集である。
連作は連作だが、そこは粋な仕掛けとして楽しめばよくて、一編一編が本当にすばらしい短編であった。
この人の著作で読んだことのある作品はまださほど多くない。だから単に今まで読んだことのある作品とは違うとしか感じられないのだが、これほど成熟した作品になるとはすごい変化だ。山本周五郎賞を取ったのもわかる。
他の作品を読むのがさらに楽しみになった。