- 作者: 黒川鍾信
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/10
- メディア: 文庫
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こんな旅館が本当にあったんだ。そして今も続いているのがすごい。
作家がこういう旅館で執筆をしているだろうとは思っていたが、まさかそれが東京の神楽坂にあるとは知らなかった。
作家と言っても脚本家がほとんどらしい。時代とともに映画製作会社もこういうところにお金をかけられなくなったため、昔ほどたくさんの脚本家が泊まることはなくなったそうだが、今でもここで執筆をしている人がいるというのがびっくりだった。
ドラマで有名になってしまって観光客が増え、昔とは変わってしまったらしい。たしかに寂しいが、そういうことはどこでもあるのであきらめるしかないのではないか。
著者は和可菜の女主人の縁戚ということもあってこれだけ内幕が書けたのだが、専業の作家というわけでもなさそうで、そのせいかちょっと文章にクセがあった。映画関係の職業を一時期目指していたこともあるらしく、その情熱がちょっと過剰に出てしまった部分もあるのではないか。
和可菜も終わるときは必ず来るわけで、跡継ぎがいないのがどうにももったいない。こういう旅館は経営が一段と難しいと思うので、他にほとんどないのが現状だ。結局近い将来、「古き良き時代」の記憶として物語だけが残るのだろう。