妄想特急 books & music

読んだ本と聴いた音楽のメモ

静かに感動する時代小説

冬の標 (文春文庫)

冬の標 (文春文庫)

画家になりたいと自分の生きたい人生を模索する幕末の女性を主人公とした時代小説。
現代と違い、幕末の混沌とした時代では画家になりたいと思っても簡単になれないし、そもそも目指すことすらかなわないのだろう。ましてや女性であればなおさらである。
主人公のひたすら我慢する生き方にやりきれない思いがした。あらゆるものに縛られて自分の人生を無駄に過ごすことの残酷さ。これがどんなにむごいことか。主人公の義母はそのように生きて死ぬ間際に後悔する。
つらい生活の中で絵に救われ、仲間に救われ、絵の先生に救われ、小さなことがとても幸せに感じた。
自分のやりたいことができているか、そう問いかけられている気がした。