妄想特急 books & music

読んだ本と聴いた音楽のメモ

読む前に聴け!

ジョン・レノンを聴け!』 中山康樹 著 (集英社新書
ジョン・レノンを聴け! (集英社新書)
なんの分野でも“評論家”と呼ばれる人種は信用できないと思っている。まったく何を“評論”するんだか。自分の思ったこと感じたことを書くだけなら“感想家”でいいじゃないか。
この本は音楽“評論家”の中山康樹ジョン・レノンの全曲について解説しているものである。
まあしかし先の理由から、僕はこの本を「ジョン・レノンの曲をよく聴く中山康樹という人が全曲について感想を述べたもの」として読んだ。じっさい感想みたいなものだ。たいしたもんじゃない。
まずオノ・ヨーコは完全に悪者に書かれている。ヨーコ単独で書いた曲などは解説すらしていない。音楽的才能のない人間がジョンと結婚したばっかりにミュージシャン気取りでしゃしゃり出てくるのはやめろ、とそういうことだろう。
たしかに僕もこの意見には賛成です。特にジョンが死んでからのヨーコの活動には目にあまるものがある。死人に口なしなのをいいことに好き勝手やっている感じがする。(先ごろ出た『サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ』のリマスター盤では、数曲アルバムから削除しているのだ! こんな暴挙が許されていいのだろうか?)
というわけでヨーコを苦々しく思っているのはファン共通の思いだろうからいいとして、それ以外に目立つ意見に「ジョンはソロになってから作曲能力が衰退してきてロクな曲が書けなくなっていたけれども、ボーカリストとしては天才なので、彼が歌えばどれも名曲になってしまう」というものがある。
あと、「アレンジ能力がないので曲自体はいいとしても最終的に全然ダメな曲になることが多い」という意見もそこらじゅうに書いてあった。
この2つの意見には賛成できない。いい曲かダメな曲かは主観でしかないから細かいことは言わないが、ジョンの生涯のどの時点の曲でもグッとくるものはあるぞ。アレンジももっと良くなるかもという曲はあるが、ダメな曲はないと思う。もちろんいくらジョンのファンの僕でも嫌いな曲はあるし、これは失敗作だなぁと思う曲もある。
しかし他人の感想を読むだけなら、絶賛ばかりのものより、多少カゲキな感想の方が楽しいことは楽しい。「うわぁこんなこと書いてる!」と笑いながら読むのがいちばんいいのだと思う。