妄想特急 books & music

読んだ本と聴いた音楽のメモ

サントリーミステリー大賞・読者賞ダブル受賞だって

『子盗り』 海月ルイ 著 (文春文庫)
子盗り (文春文庫)
まあ、こういう“○○大賞受賞!”っていうのは手にとりやすい。たくさん読むのにハズしたくないから、こういう保険をかけたくなるわけだ。そこでこの「サントリーミステリー大賞」とその「読者賞」のダブル受賞なら間違いないと思って読んでみた。
悪くはない。かなり読ませる話の展開だ。
どうしても子供が出来ないある夫婦が、思い余って病院から他人の赤ちゃんを盗んでしまうという話。歴史ある一族の本家に嫁いでしまったがために、後継ぎをどうしても産まなくてはいけないというプレッシャーに耐えかねて、という理由だが、この女性があまりにもかわいそうでかわいそうで読んでいてつらかった。
他にも不幸な女性が2人出てくる。みんな子供が絡んだ不幸である。この2人も本当にかわいそう。親と子というのは愛情が深い分、ちょっとしたことでものすごい不幸に変わるんだなと、恐い気すらした。
というわけで、物語としては読み応えもあるし良い作品だと思うが、“ミステリー”としてどうかというと、首をひねってしまう。なんてったって「サントリーミステリー大賞」なんだから。あっと驚くミステリー的展開があってもよかったんじゃないの?