妄想特急 books & music

読んだ本と聴いた音楽のメモ

絶品!

『口笛吹いて』 重松 清 著(文春文庫)
口笛吹いて (文春文庫)
全5編の短篇集である。そのすべてが泣ける!
重松清はなぜこうも家族を描くとうまいのだろうか。別に泣かそうとか感動させようとか、そういういかにもな描写があるわけでもないのに、読み終わった途端、じわっと涙が滲むのだ。
主人公はどれもかなり深刻な状況にあるところから始まる。そしてそのどれもがハッピーエンドで終わるわけではない。どちらかといえば何も解決せずそのまま終わる。しかし、なぜかラストにほのかに暖かい光が見えるのだ。どうしてなのだろう。
文章も一級品ですばらしくうまい。すべて頭の中で映像が浮かぶのである。
どこがどういいのか口で言うと陳腐になってしまう気がする。もう読んでいただくしかない。
僕にとって今いちばん好きな作家だ。