- 作者: 石井妙子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2016/03/28
- メディア: 単行本
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小津映画での彼女くらいしか知らなかったので読んでみたら、イメージがガラッと変わった。
原節子と言えば『東京物語』くらいに思っていた。しかし本人は『東京物語』が代表作でもなんでもなく、それどころか小津の映画をほとんど冷たくあしらっている。役柄が気に入らなかったらしい。
しかもそこに至るまでにすでに国民的女優になっていたというのは知らなかった。
自分には代表作と呼べる作品がないと思っていて、どうしてもそれを撮ってから辞めたいと思っていたようだ。長年の夢であった「細川ガラシャ」をやらせてあげたかった。
義兄との関係が彼女の人生のキーであることは確かだ。そこを掘り下げることは今や不可能なんだろうな。
それからやはり彼女を伝説の女優にした引退してからの隠遁生活。よくぞこういうことができるものだと驚くとともにやはり悲しい気持ちになった。義兄夫婦、また甥夫婦の努力もあったろうが、精神的によく大丈夫だったと思う。
もちろん本人の声は聴けないままになってしまったが、ここまで過去のコメントを掘り出してまとめてくれた著者には感謝しかない。
これから『東京物語』の見方が変わるかも。