妄想特急 books & music

読んだ本と聴いた音楽のメモ

はまりました

『椿山』 乙川優三郎 著 (文春文庫)
椿山 (文春文庫)
直木賞受賞作『生きる』と、この『椿山』を読んで、完全に乙川優三郎にはまった。時代小説はあんまり読まないし、読んでも宮部みゆきくらいだったのだが、この著者のは全作読破したいと思いました。それくらいはまってます。これを読み終わってすぐにブックオフで3冊購入(ブックオフかよ・・・)。もったいないんでちょっとずつ読もうかな。
短編が4篇収録されているこの『椿山』という作品集。そのどれもが悲しい話であり、おもわず涙を誘うやるせない短編ばかりだ。どれがいちばんなんて決められない、すべて良い。
でもまあひとつベストを挙げれば、「花の顔」かな。嫁のさとと姑のたきは二人暮らし。夫は江戸詰め、息子は遊学でずっと不在なのだ。ことあるごとに姑につらく当たられ、それがもう20年以上続いている。さとは自分の人生はなんだったのだろうかと絶望する。たきに痴呆の症状が出始めてさらに負担は増える。夫と息子は当てにはならない・・・。ラストは泣きました。
乙川さんって優しいんだろうな、と思ってしまう、悲しいんだけどちょっと心温まる作品集だった。