妄想特急 books & music

読んだ本と聴いた音楽のメモ

上原隆のエッセイ

『雨の日と月曜日は』 上原隆 著 (新潮文庫
雨の日と月曜日は (新潮文庫)
今まで上原隆の本はルポルタージュ・コラムを読んできたが、これはエッセイ集。ルポでは自分の存在を出来る限り表に出さないで書いていて、それがすばらしく良かった。エッセイとなるとまた違って、今度は「私」について書いた文章がとても多い。それもそのはず、上原隆がもっとも興味があることは「自分」だからだ。むしろ自分にしか興味がなく、つまらない人生だなと思うことが多いらしい。
ルポルタージュ・コラムとは別物だから別物としての感想を書くべきだろう。でもやっぱり彼には「自分」を消し去って、普通の人の人生を普通に描いてほしい。どうしたってルポが読みたいのだ。こんないいエッセイ集を読んでぜいたくな感想ですね。
ただ、彼には結構共感する部分も多かった。そうだなぁとしみじみすることもしばしば。

上原隆は、ひとは自分の力で自分というものを変えることはできないのだろうか、と書いたあとで、こう言う。

こう考えたらどうだろう?
ひとは変わらない。でも、一ミリでも変えようという努力をすることが自分の人生への愛着を生むのだ、と。

また、こんな言葉も僕に勇気を与えてくれる。

ほんの小さなことを長い時間にわたって積み重ねていると、振り返ったときに、堆積した時間が自分に自信を与えてくれる。

なんだかんだ言ってちゃんと楽しんでます。上原隆のエッセイ。