妄想特急 books & music

読んだ本と聴いた音楽のメモ

古処誠二はすごい

分岐点 (双葉文庫)

分岐点 (双葉文庫)

この人の小説はいくつか読んできた。そのたびに“すごい”と唸ってしまう。
まず1970年生まれなのに、なぜここまでの戦争小説を書けるのだろう? 単にこういった趣味を持つだけではない人間ドラマが描けている。
戦争小説は極限状態を描くことになるから、どうしたって実際戦争を体験した世代じゃないと嘘っぽくなってしまう。しかし古処誠二は抑えた筆致で、しかもわかりやすく読みやすい文体で、一歩ずつ物語を進めていくから、ぜんぜん嫌味を感じない。「実際の戦争を知らないくせに」と思わせないのだ。
この『分岐点』では動員された中学生が描かれている。なんとも悲しい結末にやりきれない思いが残った。