妄想特急 books & music

読んだ本と聴いた音楽のメモ

本日読了しました

『睡蓮の長いまどろみ』宮本輝 著(文春文庫)
睡蓮の長いまどろみ(上) (文春文庫)睡蓮の長いまどろみ(下) (文春文庫)
円熟の境地。宮本文学の真骨頂。
なんて言葉を使いたくなる、まさに熟練した筆力で読ませる傑作だ。
といっても全然堅苦しくない。純文学って感じじゃないので手軽に読める。宮本輝を未読の方は騙されたと思って読んでみてください。すんごい読みやすいから。
このテーマは“因果倶時”。「原因が生じた瞬間には結果もそこに生じている」というような意味らしい。仏教の言葉だというが、これと似たようなことを宮本輝は他の著作でも言っていた。「人間はこうだと決意した瞬間、すでに結果は出ている」といったようなことだったと思う。一時期、ぼくはこの言葉を座右の銘にしていたこともあった。
この本にはたくさんの人間が出てくる。その誰もが苦しみや悲しみ、人に言えない業のようなものを抱えて生きている。
それでも生きていかなきゃならない。人生に前向きになれる本。