『約束の冬』 宮本輝 著(文春文庫)
なんだか複雑な物語を印象的なエピソードと言葉であっという間に読めるエンターテインメント作品に仕上げる手腕はさすが宮本輝。
宮本作品を読んでいると、作者が生み出している小説というふうには感じなくて、もうすでに存在している話をただ文字にしているだけみたいな気がしてくる。うまくは言えないが。
空飛ぶ蜘蛛、パテック・フィリップの腕時計、葉巻、ゴルフ・・・。自分にはほとんど縁のないものばかりだけど、読後自分には大切なもののように思えてくる。僕はタバコは吸わないが、これを読んで葉巻をすってみたいなあと思ったもの。
大感動というのではないが、じんわり効いてくる物語である。